いつか役に立つ日
学校の勉強が実生活に役立つとは、学校に通っている時ですらあまり思っていなかった。
勉強し、テストで点数がつき、評価が決まる。勉強ができる子はいい学校に行き、大企業に入る。
漠然とそんな風に思っていた。
私は美術科目が得意だった。
ほんとうは絵をかくのが一番好きだったけれど、絵で最高評価をもらえたことはなくて、
代わりに絵以外の美術ではいつも5段階の5や10段階の10をもらえていた。
たとえば木を彫ったり焼き物を作ったりレタリングをしたり。
でも絵をそれらを職業にできるほどではない。
趣味として残ることもなく、ただ楽しい授業の記憶があるだけだ。
そういえば技術も好きだった。
電子回路やら木工やら、そんな感じで物を作るのが。
数学は苦手だったけれど、立体の展開図を考えるような分野だけはいつも満点を取れた。
平面を組み立てるとどんな形になるか、立体を平らにするとどんな形になるか、頭の中に見えていたと思う。
子どもの物を手作りするようになって、その頃の経験が少し活きたと思う。
絵を描くというのは、だいぶおおざっぱに分解すると、見たものに似せて描く技術だ。
そして展開図や立体をイメージできること。
型紙を見て大体の形を作り、できあがりをイメージしてミシンを掛ける。
本に載っていないアレンジを考える。
商売物には及ばないながら、子どもに着せても大丈夫なものができあがる。
遡るとそれは、学校の美術と数学の授業にたどり着く気がした。
いつかこんな日が来ることを知って授業を受けていたら
今ごろもっと上達していたかもしれない。
学校の勉強がどんな風に役に立つのか、子どものころは分からなかった。
それを教えてあげられる親になりたい。