「自分がやったほうが早いし確実だから」
仕事ができるようになってきた頃によく思うことではないだろうか。
後輩や、時には先輩の仕事が歯痒く中途半端に見える。
なぜこんなこともできないのか。
なぜミスをするのか。
なぜこんなに時間がかかるのか。
言われないとできないのか。
それなら、自分でやったほうが早い。
自分自身も思ったし、身の回りでもよく聞く気がする。
「そう思ってしまうけど、相手の成長の機会を奪ってしまうからよくない。
これからはきちんと指摘して本人にやってもらおうと思う」
と書かれた日報を職場で読んだ。
書いたのは勉強熱心で仕事熱心な中堅どころの社員だ。
「成長の機会を奪ってしまうからよくない」のだろうか。
それもあるけれど、そうではないと思う。
人の仕事を先回りしてやる。ミスを指摘せずこっそり直しておく。
仕事の質がよくなるからと、自分一人でやってしまう。
そういうことをすると、自分は優秀だと勘違いしてしまうからよくない、と私は思う。
上に挙げた日報もそうだ。相手を下に、自分を上に見ている。
仕事が早いから、手際がいいから、質がいいから偉いわけではない。
自分よりできない人を「しょうがないヤツ」扱いしていいわけではない。
自分ばかりが努力しているわけではないし、自分だけが優秀なわけでもない。
足りないのは何だろう?
たぶん、相手への敬意だ。先輩も後輩も関係ない。
職場ではそういうことが分かっていても、家に帰るとつい、夫への感謝や配慮を忘れそうになる時がある。
忙しいとき、体調が悪い時だ。
たとえば、自分なら子どもを見ながら洗濯も炊事もやるのに、
夫は子どもを見るだけだったりする。
そこに苛立ちそうになる。
でも違う。
家事スキルも並行作業スキルも人それぞれ。
その差に苛立ったり、自分のほうができるなどと思っても意味がない。
相手への敬意と配慮、それが必要なのは仕事と変わらない。
子どもが生まれたから何度も思った。
子どもは血がつながっているけれど夫とはつながっていない。
私たちをつなぐものはきっと互いへの思いやりだけで、
それを忘れたらそこでおしまいな気がする。