読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

IKISG

都内在住、IT職フルタイム、1児の母。親に頼れず、夫は多忙のワンオペ育児。巷のメディアに取り上げられるワーキングマザーはスーパーウーマンすぎて身近に感じられない。普通の人でも、親に頼らなくても働くにはどうしたらいいのか考えています。生後5か月の子を認証園に預けて復職し、1歳で認可園に転園。復職から3年ほどの人が書いています。

子が経験する初めての別れ

保育園のこと 子どものこと

まだ先のような気がしていたのに、ついに3月が終わってしまう。

子どもが、今行っている園から、卒園する。

 

ずっといられないことも分かっていて入園し、
転園するなら早いほうが本人がつらくないだろうと考えて認可園に希望を出した。

そして運よく入園が認められたというのに、心から喜べない。

理由は分かっている。今の園が良すぎたからだ。

このことは「いい知らせと寂しさ - IKISG」にも書いた。 

 

入る前は、こんな小さなところで平気だろうかと、失礼ながら思った。

マンションの1フロアを改築した部屋。園庭もない。

応対に出てくれた保育士さんたちは皆ベテランで感じが良かった。

子と離れるのも人に預けるのも初めての経験だ。

恐る恐る、その生活がはじまった。

 

園で過ごした1年弱、子どもは驚くほど成長し
今では家の中も外も自由に歩き回り、
自分の言葉を喋って(大人には通じない言葉なのが残念だ)、楽しそうに笑っている。

自分たち夫婦の力とは思えない。

私たちは初めて持った子にどうしていいか分からず、
愛情を注いだことは間違いないけれど
良い環境を与えられたか、いい遊びをしてあげられたかと考えると甚だ疑問だ。

今の健康、今の成長ぶり、たくさん笑ってくれる子ども。

全て園のおかげだと思う。

 

 

卒園式。

いつもエプロン姿の先生たちがフォーマルウェアで迎えてくれた。

飾り付けられた室内に座る。

園児一人ひとりの名前が呼ばれ、保育士から園でのエピソードが語られる。

カメラを構えながらわが子の出番を待つ。

2人いる担任のうち、年長の先生がわが子の名を呼んだ。

心なしか他の子より長いエピソードを語る途中、先生は言葉を詰まらせていた。

 

卒園証書の授与が終わり、みんなで食事をとり、子どもたちに絵本を読み聞かせ、
最後にみんなでお茶を飲んだ。

そろそろ飽きてぐずり出すわが子を、担任の先生は膝に抱いてくれた。

 

その園は食事にも気を配っていて、
栄養士さんが考え、調理師さんが作った自前の給食が用意されていた。

市販のおやつはあげず、全て手作りだと入園前に聞いた。

私自身は食の安全にさほどこだわりはないほうだが、
そんな園に入ったことと、初めての子で加減が分からないこともあって
なんとなく右に倣えで市販品をあげずにいた。

 

担任の先生は、膝に乗せたわが子にお菓子をあげていた。

自分の親にそれをやられたら、たぶん猛然と抗議するだろう。

自分たちが今までしてきたことを横から邪魔されたくない。

 

だが、不思議と腹は立たなかった。

プロのすることだから。それもある。

 

でもそれ以上に、私は知っていたからだ。

その先生は誰よりうちの子を可愛がってくれていた。

 

小さいころから園生活を送ったわが子は誰にでも愛想がいい。

でも、私と夫に向ける笑顔と同じ笑顔を向けるのは
その先生に対してだけだった。

本当に嬉しそうに笑うのだ。

それを見ていたら、本当に良い園に入れたのだと実感できた。

 

子はきっと分かっていない。

もうその園の先生たちと、友達と一緒に過ごす日が来ないこと。

来月から新しい園に行っても、なぜ身辺ががらりと変わってしまうのか
分かりようもないだろう。

 

先生に向けていた笑顔を思い出すと胸が痛む。

どんなにかわいがってもらっても、私たちは家族ではない。

勝手にもう一人の祖母のように思っていたが、それは私の心の中だけの話だ。

 

お金を払ってサービスを受けた。

それだけではない何か素晴らしいものも受け取った。

だからこそ悲しくなるのだと思う。

 

私が生まれる前からあったというその園が、本当に尊いものに思える。

情熱をもって仕事をする人たちは美しい。

 

広告を非表示にする